パタゴニアのマイクロパフについてその特徴を解説・レビューしてみます
▼マイクロパフフーディ
(https://m.media-amazon.com/images/I/51LhZ4C8hlL._AC_.jpg)
パタゴニア マイクロパフの特長を掘り下げレビュー
「パタゴニアのマイクロパフ」
このウェアは、パタゴニアの「化繊インサレーション」の歴史からみると初期のころに販売されてきたウェアです
人気はそこそこあったのですが、新アイテム「ナノパフ」「ナノエア」など軽量で着っぱなしができるウェアの開発が理由で、一度カタログから消えた経歴があります
それが2017年ころに以前のマイクロパフの立ち位置とは変わった立ち位置で復刻してきました
個人的にパタゴニアではあまり見ない復刻の仕方だったので驚いた記憶があります
一般的に「マイクロ(パフ)」と「ナノ(パフ)」という単位を比べると(単位だけの話)マイクロの方が大きいです
でも現時点のパタゴニアプロダクトでは、「ナノパフ」より「マイクロパフ」の方が軽いようになっています(ややこしい・・)
あまり知らない人が名前だけ聞くと勘違いしやすいところかなと思っています
マイクロパフは、一般的に言われている「ヘリテージモデル(殿堂入り復活モデル)」という感じではなく、化繊インサレーションの最新モデルを作ってみて、良い名前は何かないか・・・とみてみたところ「マイクロパフ」があった・・・という感じで名前をつけた感じがします(ボクのイメージ)
そのくらい突然復活してきたウェアという印象の化繊ウェアです
===「マイクロパフ」の特徴===
超軽量シェル
「超軽量シェル(外側の生地)」がとにかく売りなんだ!とパタゴニアは言っていますが、「超軽量シェルがうりです」と言っているメーカーはたくさんありますのでそれほど珍しくありませんです
それではパタゴニアの「超軽量シェル」とはどのようなシェルなのでしょうか
マイクロパフで使っているシェルの名前は「パーテックス・クアンタム・リップストップ・ナイロン」という長ったらしい名前の素材
これは「パーテックス」という1979年創業のメーカーPerseverrance Mills社(パラシュート)の素材で、軽くてしなやかな特長の有名な素材で、この素材の上位素材が「パーテックス クァンタム」です
このクァンタムはスタンダードのパーテックスより細かい繊維で編んであるのでダウンなどが抜けにくい特徴があります その超極細糸は軽量さも売りのひとつにもなっています(でも高いはず)
そして、それにプラス「リップストップナイロン」も使われています(もっと高くなる・・)
リップストップナイロンとは縦横に網目状に配列された繊維で破けにくく、とても丈夫なナイロンの素材のこと
この2つが組み合わさってできた超軽量シェルは、おおまかにいうとテクノロジーの宝庫で超軽量なのにとても破けにくいナイロン生地ということです
パタゴニアの公式サイトに森山憲一さんのマイクロパフの記事があり、それによると「開発では7デニール(糸の太さ)では破けやすいので10デニール(糸の太さ)にした」とかいてあります
▼森山さんのマイクロパフの記事

この記事から、1デニール増やしたり削ったりするために、多くの実地試験と考察を重ねて「マイクロパフ」ができていることがわかります
この1デニールの増減は、アルパインに特化させるために、登山でぎりぎり破れないことを前提に調整されていて、それだけ「登山に特化」させたインサレーションと言えます
※言い忘れましたが、パタゴニア名物の「DWR(耐久性撥水)」も付加されていて、ちょっとした雨でも問題ありません
画期的インサレーション
マイクロパフのメインになる特長のひとつに「プルマフィルインサレーション」という化繊の中綿があります
この中綿を公式では「ダウンのような温かさ」と言っています
それくらい保温性があるということですが、森山憲一さんの記事から拝借すると、「現在の厚さ」だけがダウンと同等らしいということのようです これ以上量を増やしていくと、ダウンの方が暖かくなっていくといいます
難しいですね
ということから、「ダウンのような」と言っているだけで、「ダウンと同等」ではないというところが注意点です(マイクロパフ程度の使用量ではほぼ同等らしいが・・)
そうはいっても化繊の特長の一番大事なところは「濡れてもある程度保温性あり」「速乾性も高い」という2つの柱がとても大切です
これはダウンでは全く期待できないところで、この速乾性とダウンに準ずる保温性を装備していることが、パタゴニア最強の化繊インサレーションと言われる理由です
革新的なキルト構造
キルトとは特別な構造ではなく一般的に羽毛フトンなどで使われている昔からある「縫い方」で、刺し縫いのことをキルティングといいます
縫い方は、表と裏の布地の間に小さな袋を作るように縫い、その中に中綿がずれないよう封入します
ウィキペディアではキルティング=パッチワークキルトと書いてあり、日本人には「パッチワークキルト」の方がわかりやすい名称かもしれません
この縫い方は、羽毛などの中綿がずれにくいようにする構造で、中綿を使うほとんどのアイテム(フトンやダウンジャケットなど)がこの縫い方です・・というか中綿の縫い方いろいろはありますが、基本はキルト構造のようです(ボクが調べる限りです)
なのでキルト自体はそれほど珍しくありません
普通のキルト構造の場合、布で四角に縫い付ける技法が一番シンプルで使われています でもそのやり方は縫い付けた糸の部分の表と裏の生地の距離がほぼゼロになり、イコールその部分の保温がほぼ「ゼロ」に近くなるということになります
そうなると保温に影響がでます
ここで、特殊なマイクロパフというかパタゴニアのキルト構造のお話です
特殊な縫い方で縫い目をずらし、表と裏の距離がゼロになる部分を極力減らしていて、なおかつ最小限の糸で軽量化をする技法をパタゴニアでは編み出しました
これは特許として現在出願中のとても特殊な技法です
使用している中綿(化繊プルマフィルインサレーション)がヒモのようにつながる性質があり、この縫い目を少なくするキルト構造に一役買っているようです
フロントジッパー
フロントジッパーにも工夫があります
工夫は2つ、「ストームフラップ」と「ジッパーガレージ」です
これは目立つ機能ではないので、よくみないとわかりません
「ストームフラップ」というのはジッパーの隙間から雨が入らないようにジッパーの裏にある当て布のこと
「ジッパーガレージ」というのは、ジップがしっかり上まで上がってしっかりストップするようにするためのジップに施された工夫(溝が深くなっています)です
この2つはちょっとした工夫ですが非常に便利
ストームフラップがないとちょっとした雨でも、水滴が吸い込まれるようにジップに向かって中に入ってきます
ほかのところはそれほどでもないのに、ジップのところだけ濡れてしまうということもあるので、裏の立役者的な機能がストームフラップです
ジッパーガレージも快適に使うための機能です
ジッパーガレージが無いと、最後までジップを上げても、少し動くとジップが下がってきてしまいます
動くたびに下がるので、ストレス極まりなくなりますが、このジッパーガレージがジップレールの先端にかかってくれるので助かっているというわけです
※ぶっちゃけて言うとこの2つの機能は、そんなに珍しくないようなきがします なんとなく大げさに言っているような気がしてならないのが、この2つの機能です
ポケット
「せっかく軽くしたのにやっぱつけるの~?」と思ったのが外に2つ、内に2つあるポケット
ボクはあった方がとても助かりますが、「超軽量」を売りにするならば、計4つあるポケットはちょっと減らしてもいいかなと思ったところでした
ただ、森山さんの記事をみると、「内側のポケットは外側のポケットを利用しただけ」ということなので、それほど重さに干渉しないらしい・・
なんとなく納得いくような、いかないような・・ですね
登山に特化したウェアといってはいますがブランド化による「普段着使いもイメージしているからなのかな」と思っています(ノースフェイスと同じ感じ)
軽量化だけを売りにするならば、ナノパフのプルオーバーのように胸に1つだけポケットというやり方もありますが、普段着で使う場合にはちょっと不便になりますからね
なんとなく中途半端な感じがするポケットの機能でした
ヘルメット着用に対応するフード
フーディの説明ですが、この書き方をみると、「マイクロパフーディはヘルメットの上に着用ができる!」・・と思ってしまいます・・・でもそれは間違い
公式には「ヘルメットの下に装着できる」と書いてありますので、ヘルメットの上から被れるわけではありません
ほぼどんなフーディウェアでもヘルメットの下に装着できると思うので、ここは勘違いしやすい、ちょっとミスリード的な特徴の紹介と思いました
温かさを封じ込める
最後の特長の紹介は一部タイトルとは合わない説明も入っていると思われます
説明では「袖口の伸縮によって暖かさを封じ込める」という表現があり、これはまだなんとなくゆるせますが、そのあとの「フェアトレードサーティファイドの縫製を採用」というのは温かさとは関係がないような気がします
「フェアトレード」とはウェアを作る過程で、原材料など弱い立場の発展途上国の方たちに対して適正な賃金を支払い、生産者の環境の向上を目的としたシステムで、登山の世界ではウェアメーカー「パタゴニア」が第一に活動していますが、食べ物やスポーツ用品などでも取り入れられているシステムです
この仕組み自体は画期的ですばらしいシステムです でも温かさとは直接関係ありません
もしかすると、直接の温かさではなく、消費者が公正なシステムに手を貸すことで得ることができる「心の充足」を「温かさ」と言っているのかもしれません(予想)
パフとは
マイクロパフの「パフ」という言葉は、日本ではあまりウェアでは使われていません
意味としては、「中に空気が入って軽く膨らんだもの」という意味です(お化粧のパウダーパフなど)
空気を封じ込めて、温かさと軽さをイメージさせるので、パタゴニアのマイクロパフ、ナノパフにはうってつけの名称です
マイクロパフフーディのススメ(patagonia micro puff hoody)
マイクロパフシリーズで一番温かいのが「マイクロパフフーディ」
ジャケットとの違いは、みて分かる通り「フード」がついていることです
軽量化を極限まではかるならジャケットですが、ボク的には快適なフーディがおすすめ
ファッション性もあるし、なにより温かい(ほかのレイヤーでフードを確保するならジャケットでも可)
価格差は5000円ですが、その価格以上の快適性が望めると思うので、ガチガチのアルパインで軽量化重視でなければフーディがおすすめ(特に初心者ならばフーディが良いかと)
メンズ・マイクロ・パフ・フーディ
メンズのマイクロパフフーディはこちら
レディース・マイクロ・パフ・フーディ
レディースのマイクロパフフーディはこちら
マイクロパフジャケットは軽量化で使う
パタゴニアのマイクロパフ ジャケットはマイクロパフシリーズの中で一番軽量タイプ
登山で使う場合は、アルパインなどでもより軽量化が必要なときに使うのがおすすめ
個人的にはフーディがおすすめですが、ジャケットはフーディと比べると30g(約10%)も軽いので、ウルトラライトなアイテムを探している人ならこちらを選ぶはずです
一般的に言うと「30g」というのは、「そのくらいの重さ、あまりかわらないのでは?」と言われてしまう重さ
そのためウルトラライトやアルパインに興味がある人以外は、ファッション性を重視して、好きな方を選ぶのがおすすめです
パタゴニア「マイクロパフ」と「ナノパフ」の違いは?
シンプルに言うと
「マイクロパフ」は登山特化のフラッグシップウェアで、「ナノパフ」の上位アイテムという立ち位置です
ここでは「マイクロ」と「ナノ」の名前は逆に邪魔になってしまっています
単位の世界の大きさは「マイクロ > ナノ」ですが、このパタゴニアウェアの重さは「マイクロ < ナノ」・・・ややこしい
もう少し細かく解説すると
- マイクロパフのナノパフとの違い
- ナノパフより軽い
- ナノパフと同等の暖かさ
- ナノパフよりシルエットがやや細み
- ナノパフより高価
簡単に言うとこんな感じ これをもう少し細かく言います
- ナノパフはリサイクルナイロンで、マイクロパフはバージンナイロンがほとんど
- ナノパフの中綿は「プリマロフト・ゴールド・インサレーション・エコ」で、マイクロパフは「プルマフィル・インサレーション」
というところ
中綿の質は、同じ量ならば、後発のマイクロパフが優秀ですが、シェルのナイロン地の厚さがナノパフのほうが厚いので、結果的に暖かさは同等程度に感じられます
カスタマーセンターの人にうかがってみると、やはり暖かさは同等で、軽さが売りだということ
マイクロパフでリサイクルをあまり使っていないのは、登山に特化させて保温力を高めるためです
(▼マイクロパフの仕様)
素材
シェルと裏地:
0.7オンス・10デニール・パーテックス・クアンタム・リップストップ・ナイロン100%。
DWR(耐久性撥水)加工済み。インサレーション:ポリエステル100%の65グラム・プルマフィル264 g
出典:patagonia
(▼ナノパフの仕様)
素材
シェルと裏地:
1.4オンス・22デニール・リサイクル・ポリエステル100%。DWR(耐久性撥水)加工済み。
インサレーション:ポリエステル100%(消費者から回収されたリサイクル・ポリエステル55%)の60グラム・プリマロフト・ゴールド・インサレーション・エコ。
ブルーサインの認証済み363 g
出典:patagonia
マイクロパフはナノパフより軽いですが、価格が高いため、重さが気にならなければナノパフで十分(価格も1万円くらいの差があります)
実際ナノパフもかなり優秀なので、おすすめ
個人的にはお金が惜しいので、激しい登山(服が破れそうなくらい)のときは、ナノパフ(生地がやや厚いので)を使って、それ以外はマイクロパフを使う・・・という使い方になりそうです
パタゴニアナノパフのレビュー記事はこちら
