エベレストのデスゾーンとは「そこにいるだけで人間が死んでしまうエリア」のことです
どんなに山に興味のない人でも、ヒマラヤの山「エベレスト」は知っていると思います
この山は「世界の最高峰」で「世界一の知名度」を誇る(ほこる)山
下界で「エベレスト」という名前を聞くと、タレントの「イモトさん」や「なすびさん」がチャレンジした山というイメージがありますね
そんなイメージから、それほど「ハードルが高いとは感じない」かもしれません
ですが、本当のエベレストは過酷(かこく)で、ワンミスが命取りになる「死の山」なんです
それを表す一番のハードルが「デスゾーン」
「デスゾーン」とはそこにいるだけで「人間が死んでしまうエリア」のことで、絶命(ぜつめい)のスピードは違いますが、「ガス室」にいることと同じです
この山はただ世界一高いだけの山ではなく、世界中の登山家や山岳写真家があこがれる魅力を持ち、そして行くだけで「死」に近づいてしまう、最高峰の山なのです
▼初めての登山[登山入門:服装・持ち物など]
エベレストのデスゾーンを超えるには
エベレストの約8,000m以上のエリアのことを一般的に「デスゾーン」呼びます
冒頭(ぼうとう)で書いたように、滞在(たいざい)しているだけで、死んでしまうエリアのこと
「酸素」が少なすぎて、じっとしているだけなのに、カラダがどんどん疲れていきます
これが登山の「一番のハードル」といわれていますが、世界一の山は、それ以外にも過酷(かこく)なハードルが存在します
▼登頂前後の動画です キリアンジョルネ氏(連続2回登頂している天才)ともすれ違っていてすごい
行く手を阻むジェット気流
ジェット気流とは、高度8~13キロメートルの上空に吹いている猛烈な偏西風(へんせいふう)のこと
どのくらいすごいかというと、ジェット気流は毎秒100mくらい
100mというと、平気でクルマが木の葉のように飛んでいくほどの風です
その名のとおり「ジェット」
人間などは、ひとたまりもありません
そして、8000mを超えるエベレストの場合、山頂付近はこの「すさまじいジェット気流」が吹き荒れているところなんです
想像するのができないレベルです
まさに自然の脅威(きょうい)で、いうまでもなくそんな風では登山は全く「不可能」
そのため、エベレスト登頂を目指せるのは、このジェット気流がエベレストからそれる「5月」と「11月」付近のみになります
エベレストの気温
ジェット気流をさけて登山を計画したとしても、まだ問題があります
それは「気温」
5月で「マイナス20℃」付近の山頂は、11月にはなんと「マイナス30℃」の極寒になるため、通常「5月の数週間だけが登頂のチャンス」になるのです
まさにピンポイントです
そしてそのマイナス20℃~30℃温度をわかりやすくいうと、「バナナで釘が打てる温度」がマイナス15℃なので、それ以上厳しい温度です
この温度だけなら、北海道の夜もこのくらいの温度になりますので、あまり驚き(おどろき)ませんが、これに「風」と「低酸素」が加わると、死のエリアになります
デスゾーンの酸素濃度は3分の1
デスゾーン一番の難関(なんかん)はやっぱり「ガス室」と同じと考えていい、「酸素の薄さ」です
エベレスト山頂付近の酸素濃度は、なんと「地上の3分の1」程度しかありません
そのため、これまでエベレストの登頂に成功した人の97%以上は「酸素ボンベ」を装着しての登頂となり、補助酸素なしでの登頂はほとんど不可能とされています(無酸素登頂している人は、かなりの訓練をしています)
しかし、その酸素ボンベも無限ではありません
限られた重量の中で、ギリギリのボンベしかもっていけないので、ほとんどの人が酸素が欠乏(けつぼう)して、高山病になります
ひどくなると「脳浮腫(のうふしゅ)」と言って脳が「腫れ(はれ)てきます
「脳みそが腫れる」って、全く想像できません
この症状になると、意識があやしくなり、幻覚(げんかく)が見えたり、判断ができなくなったりで、厳しいエベレストの山頂付近では「命取りの症状」がでてきます
そのため、エベレスト登頂前には「高所順化」と呼ばれる低酸素になれる訓練などが欠かせないのです
エベレストの登頂率
エベレストの環境は過酷(かこく)ですが、技術や装備の進化で、訓練は必要ですが、一般的な人も登れるようになっています
ウィキペディアを見てみると、その登頂成功率も飛躍的(ひやくてき)に伸びていて、1953年~1973年までの登頂者が「38人」に対し、2007年だけで「633人」もの人が登頂に成功しています
さらに、日本人専用の登山ツアーであるアドベンチャーガイズ(近藤謙司さんのとこの会社ですね)によれば、2004年~2013年に23名が参加し、17名が登頂することで「登頂率が74%」になったとのこと
▼なすびさんを登頂させた「アドベンチャーガイズ」の動画 なすびさんもいます
このように、エベレストは人類の進歩で、ちょっとだけ身近になってきているといえます
エベレストの登山料金
エベレストに上るには、入山料から渡航費、装備の費用などかなりの金額がかかります
ナショナルジオグラフィックによれば、エベレストに個人で挑んだ場合の費用は、
「約1,000万円」かかります
今や山頂を目指す人の約9割がガイドを雇った“お客さま”登山者で、その多くは登山の基本的な訓練を受けていない。
彼らのなかには、3万~12万ドル(約300万~1200万円)もの大金を支払うからには、山頂に到達できて当然という考え違いをする者も少なからずいるようだ。
この金額を個人で用意しようとすると、一般の人には難しいと思います
出せたとしても、趣味にこの金額を使うには、家族に大反対をされそうです
ある意味、一般の場合、現在のエベレスト登頂の「一番の壁」は、この資金問題が大きいです
この資金を集めるには、かなりのお金持ちか、もしくは大手スポンサーと契約を結ぶか、あるいはテレビの企画でもない限りムリ
こう考えると、まだまだ手の出せない山でもあります
エベレスト登山|エベレストはどんなところか
まずはエベレストはどんなところか
エベレストはチベット語で「チョモランマ」、ネパール語で「サガルマータ」と呼称される山で、その標高「約8850メートル」にも達する世界の最高峰です
またチベット語のチョモランマは地母神(母なる大地の神)という意味もあり、信仰の対象ともなっています
エベレストはどの国のもの?
エベレストはただ1つの国や人のものではありません
その場所は「ネパール」を南に「中国(チベット)」を北に臨む(のぞむ)国境の上にあり、ヒマラヤ山脈のマハランガー山群の一つになります
日本の山でも「県境(けんざかい)」が山頂で分けられているという場所は多いです
このエベレストもそんな感じです
そしてそういった場所は、大小(だいしょう)ありますが、「境界の争い」があります
ネパールと中国も仲はあまりよくないのでは・・・・と思ったのですが、意外に悪くはないようです
鉄道をいっしょに作ったり、経済レベルの協力をしたりと、逆に仲がいいようにみえます
▼「中国とネパール、チベット・カトマンズ結ぶ鉄道建設などで合意」
中国としては、南のインドとネパールのご機嫌をとって、できるだけこちらのほうを向いてもらえるようにしているようです
▼日刊現代 「中国共産党が「ネパール乗っ取り」を目論んでいるこれだけの証拠」
エベレストの死亡確率
2006年までで、エベレストの死亡確率は
「約1.08%」
こう見ると確率は低いように見えます
最初に登頂に成功したのは、1953年エドモンド・ヒラリーとテイジン・ノルゲンによる初登頂です
そこから多くの登山者エベレストに登頂しています
ウィキペディアを見ると
- 登山者:7,929人
- 死亡者:86人
(1950年から2006年)
ここから計算すると、約90人に1人がエベレストで命を落としています
これを割合にすると、「1.08%」
交通事故で死亡する確率は10万人に対して4.6人と言われ、確率は「0.0046%」なので、ここから比べると、かなりの高い死亡確率ということになります
参考:ヨミウリオンライン「死亡保険はムダ?「もしも」の確率は何%なのか」
(https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160520-OYT8T50039.html?page_no=2&from=yartcl_page)
参考:人工10万人に対する死亡事故ランキング
ほかにも「alanarnette.com」の最新のデータを見てみます
そのサイトには、
295 people (175 westerners and 118 Sherpas) have died on Everest from 1924 to December 2018, about 3.5%.
1924年から2018年12月までの間に、295人(西洋人175人、シェルパ人118人)がエベレストで亡くなっています。これは約3.5%です。出典:alanarnette.com
と記録されていました
当初の「1.08%」と比べると死亡率が高くなっているのは、死亡率が特に高かった1950年以前のデータを入れたからですね
ほかのデータを見てみると
From 1923 to 1999: 170 people died on Everest with 1,169 summits or 14.5%.
1923年から1999年まで:170人が1,169人の首脳会談で14.5%のエベレストで死にました。But the deaths drastically declined from 2000 to 2018 with 7,990 summits and 123 deaths or 1.5%. However, two years skewed the deaths rates with 17 in 2014 and 14 in 2015.
しかし、死者数は2000年から2018年にかけて7,990人の首脳会議と123人の死者(1.5%)で劇的に減少しました。出典:alanarnette.com
と書いてありますので、現在は「約1~2%」と言っていいと思います
年々、技術と装備が進化していっているせいか、死亡率はかなり減っているようです
詳細はコチラの「ヒマラヤンデータベース」をごらんください
エベレストの年間登山者数は700人
現在は、エベレストの年間登山者数は、約700人です
装備が発達し、かつてほどの過酷さはなくなったとしても、それでも100人に1人が命を落とし、登るためには莫大な費用がかかるにもかかわらず、これだけの人が登頂を目指して集まってくるのです
▼こちらのニュースでは、2018年には807人が登頂成功しているということ
サー・ジョージ・エベレスト
現地では「チョモランマ」の名前で親しまれていますが、欧米や日本ではやっぱり「エベレスト」の名前がしっくりきます
この名前の由来の人が「サー・ジョージ・エベレスト」というイギリスの探検家
呼び捨てしてはダメです
「サー」の称号(しょうごう)を持っているということは、イギリスの女王より「ナイト」を授けて(さずけて)もらったということですから
それまでの名前は「PeakXV(ピーク15)」という測量点としての名前でした
その後、この山が一番高い山ということがわかって「エベレスト」になったのです
一番高い山と発見したのは、当時のインド測量局で、そこの前任の「測量局長官」がサー・エベレストさん
当時の長官が前任に経緯を表してつけた名前だということです
これがその長官が自分の名前をつけた場合は、もしかしたらエベレストは「ウォー」(当時の長官名:アンドリュー・スコット・ウォー)になっていたかもしれません・・・ね
参考:ウィキペディア
エベレストに登った日本の有名人
最後にエベレスト登頂者の歴史に名を刻んだ日本人を見ていきます
・日本人初登頂者:植村直己、松浦輝夫(1970年5月11日)
日本人初登頂者は、松浦輝夫さんと、あの有名な冒険家植村直己さんです
・最高齢登頂者:三浦雄一郎
プロスキーヤーでもある登山家で、最近では健康食品でおなじみの三浦雄一郎さんが世界最高齢登頂者です
登頂時の年齢は、なんと80歳でした
現在はアコンカグア登頂を目指しましたが、途中でドクターストップがかかって断念
残念ですが、それでも86才でそこまで行けるのは鳥肌ものです すごい!
以下そのときのインタビュー
標高が7000メートル近くある南米最高峰の「アコンカグア」に挑戦し、日本時間の21日登頂を断念した86歳の冒険家、三浦雄一郎さんがNHKの電話インタビューに応じ、「突然のドクターストップで、断念を受け入れるのに1時間ほど悩みました」と、決断の時の様子を語りました。
トレーニングをして高所に耐える体に仕上げ、90歳でエベレストにチャレンジしたい」と早くも次の挑戦へ意欲を見せていました。
出典:NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190122/k10011786361000.html
まだまだ行けるって・・・もう人じゃない気がします
・女性最高齢登頂者:渡辺玉枝
女性登山家渡辺玉枝さんが女性での世界最高齢登頂者、なんとこの方2002年に63歳で記録を樹立し、その10年後自ら73才でその記録を更新しています
・世界初全聾者による登頂:田村聡
全聾、つまり全く耳の聞こえない障害を持ちながら世界初の登頂に成功したのも、日本人です
エベレストはどうやってできたのか
では次に、エベレストはどうやってできたかを解説します
▼こちらのエベレストト雑学の動画です
インド亜大陸の衝突によってできた
エベレストの誕生は中国やロシアがある「ユーラシア大陸」に向けて、プレートごと動いてきたインド亜大陸(現在のインド全域に当たる三角形の大地)がユーラシア大陸にぶつかったことにより海底が盛り上がって生まれました
証拠にエベレストの山頂付近には、かつて海底であった証拠として貝の化石が発見されることがあります
この地殻(ちかく)のプレートの動きを「プレートテクトニクス」と言い、エベレストの存在は、地球の表面が常に動いていることの証明です
最初にぶつかってきたときは、近づいてくる大陸で、海峡(かいきょう)がどんどん狭く(せまく)なってきて、大陸がくっつきます
そこから徐々(じょじょ)に山が大きくなっていきます
今では世界で一番高い山ですが、最初は小さな丘でした
エベレストは今なお成長している
このプレートの動きは、今も活発に活動しています
そして、現在もインド亜大陸はユーラシア大陸に向けて押し上げを続けていて、年間4㎜ものスピードで山頂が高くなりつつあると言われています
年間4㎜というと、0mから8,850mのエベレストができるまでは、簡単に計算すると、8,850m÷0.04mで、221250年=「約22万年」くらいかかっています
しかもそれだけではなく、エベレスト自体が年間3~6㎜ずつ北東へ移動しているという報告もあります
エベレストは今もなお成長を続けている、生きている山、といってもいいでしょう
まとめ
エベレストはいまのところ、お金を積めば、それなりに安全な確率で登山が可能ですが、最近は温暖化の影響から、氷が解けて、不安定になっているようなのでちょっと危険かもしれません
山頂に登頂することを目的とすることもいいですが、「山は遠くから見た方がいい」という意見もあります
トレッキングで、雄大なエベレストを横目に見ながら、トレイルをゆっくり歩くのもいいかもしれません
その他 参考文献:
エベレストが “特別な山” である11の理由
ウィキペディア
alanarnette.com:http://www.alanarnette.com/blog/everest/everest-2018-coverage/
ヒマラヤンデータベース