富士山などの登山届けの「義務化」を解説
登山届の義務化をすすめている県とその内容・提出先について書きました
ここ最近、登山届義務化に向けた動きが目立つようになってきました
特に、御岳山の噴火事故や、山梨県の富士山が世界遺産にしてされたことが大きな引き金で、山梨県でも平成29年10月に条例化になりました
登山届の条例化がすすむ理由として、慢性的な山の事故の発生件数増加がその理由です
連休になると、登山による事故が多く、「島崎三歩の「山岳通信」第 70 号」などを見てみると、慢性的になっていることがわかります
下記のように登山届義務化について、現在行っている県別に整理して、また、登山届を出さないような人について考えてみました
=▼ 目次=
- 新潟県の登山届け義務化
- 長野県の登山届け義務化
- 富山県・群馬県の登山届け義務化
- 岐阜県の登山届け義務化
- 山梨県の登山届け義務化
- 登山届を出してもらうにはどうしたらいいか|下山報告も重要
- 登山届を書かない(書きたくない)理由
- 登山届を出さない人ってどんな人か?
- パソコンを使えない人は、どうすると登山届を出すようになるのか
- 登山届は増えているが、内容の不備が問題・・・でも・・
- 下山後の報告も重要
- まとめ
- 登山届をインターネットで書くには「コンパス」が便利
▼関連記事
新潟県の登山届け義務化
新潟県にも新しい条例があります
「新潟焼山における火山災害による遭難の防止に関する条例」と言って、焼山の頂上を中心に2km圏内が届出義務の対象です
▼届け出先などはこちらです
こんなニュースもありました
2017/4/6 23:07
岐阜県が、事前に登山届を提出せずに北アルプスなどに入山した登山者に過料を科す条例の罰則規定を初適用していたことが6日、岐阜県などへの取材で分かった3月に遭難、救助された男性登山者に5万円の過料を科した男性は警察に救助された際、登山届を提出せず入山したことを認めたという昨年12月1日に施行した改正県山岳遭難防止条例の罰則規定は、北アルプスの西穂高岳など危険度の高いエリアに入る際、無届けだったり虚偽の記載をしたりした場合、5万円以下の過料を科すとしている
出典:日経新聞
つまり、焼山2015年は6月からすでに条例で登山届が義務となっていましたが、2017年からはさらに厳しくするということでした
警告に従わないと、5万円以下の罰金が発生するというので、山菜採りの方も必ず提出が必要になります
長野県の登山届け義務化
長野県にも登山届が必要な場所があります
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/smartphone/tozankeikakusho.html
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/tozanjorei/tozanjorei.html
エリアは
- 北アルプス (白馬岳、唐松岳、槍ヶ岳、奥穂高岳など
- 中央アルプス(木曽駒ヶ岳、宝剣岳、空木岳など
- 南アルプス (甲斐駒ヶ岳、仙丈ケ岳、赤石岳など
- 八ヶ岳 (蓼科山、天狗岳、赤岳など
- 志賀・苗場 (岩菅山、苗場山など
- 戸隠 (戸隠山、黒姫山、飯縄山など
- 上信国境 (四阿山、浅間山など
- 奥秩父 (甲武信ヶ岳、金峰山など
- 御嶽山 (御嶽山
などです
▼詳細はコチラ
ちなみに長野県の届出は義務ですが、罰則規定は設けていないようです
富山県・群馬県の登山届け義務化
▼群馬県と富山県はかなり昔から登山届の条例があります
(群馬県と富山県の登山届に関する条例資料)
https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/25115.pdf
http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangakusounan/kentou/documents/shiryou03-02.pdf
群馬県は「群馬県谷川岳遭難防止条例」という条例で、エリアは谷川岳に対しての登山届を義務付けています
こちらは昭和42年に制定された条例で、罰則もあります
最近では、平成25年に罰則の規定が適用されているようです
▼詳細はコチラ
富山県の「富山県登山届条例」はもっと古く、昭和41年3月に制定されています
さすが、富山県、昔のころから、登山に対する考え方が進んでいたようです
エリアは剣岳周辺です
▼詳細はこちらからどうぞ
岐阜県の登山届け義務化
岐阜県では「岐阜県北アルプス地区及び活火山地区における山岳遭難の防止に関する条例」という条例で、平成26年12月1日から施行中の新しい規定があります
対象山岳エリアは北アルプス地区(焼岳含む)、御嶽山、白山の各エリアです
詳細は下記サイトより確認ください
こちら岐阜県も罰則があるので、注意ですね
山梨県の登山届け義務化
そして、最後に山梨県です
山梨県は平成29年に義務化になりました
下記は決定する前の義務化につながるニュースです
( http://www.sankei.com/region/news/170526/rgn1705260033-n1.html )
県は25日、山岳遭難事故を減らす「安全登山対策検討委員会」(委員長・今井久山梨学院大教授)を開き、難易度が高い山で年間を通じ、登山届の提出を義務づける県条例を制定することで大筋合意した
遭難事故が多発する中、安全登山の徹底を促すことが目的富士山や南アルプス、八ケ岳、鶏冠(とさか)山(秩父山系)など登山難易度が「上級」の山々を対象にしていく方針だ
また、山梨では防災ヘリコプターの有料化も検討していて、賛否両論あるようですが、これも時間の問題で、有料化になると思います
罰則については、まだ検討中で、他県の例を考えると、罰則は適用されることが予想されます
ちなみに対象の上級山岳のエリアは、富士山や南アルプス、八ケ岳、鶏冠(とさか)山(秩父山系)などが対象となりそうです
▼山梨県の登山届けについてはコチラ
「山梨県警察」のホームページをごらんください
登山届を出してもらうにはどうしたらいいか|下山報告も重要
これまで説明したように、登山の観光を重視している県では、条例で登山届を出すよう義務づけてきています
例えば北アルプスに入山のとき、登山届を出さないと、
「5万円の罰金」
この5万円の罰金は、家計にとっては大きいですよね
調べる限りでは、普通車の一時停止違反が7,000円の罰金
なので、簡単に
「7倍以上」
これを払うと、かなりガッカリです
「未提出の男性に過料5万円 条例罰則初適用 岐阜」
この2017年4月のニュースを見ると、同年3月に北アルプスで遭難した人が、登山届を出していなかったので、5万円罰金を払うように処分決定されたそうです
これは洒落(しゃれ)にならないです
完全に「泣き面に蜂(はち)」
なるべくこうならないようにしたいです
でも、なかなか「全員」が届けを出すようには、ならないですね
登山届を書かない(書きたくない)理由
自分なりに、登山届を「出したくない理由」を考えます
- ちょっと裏山に行くだけなのに仰々しく(ぎょうぎょうしく)登山届は恥ずかしい
- 登山届を書くのが「めんどくさい」
この2つが書きたくない理由だと思います
以前は自分もそうでした
今は反省して、登山届を細かく書いてますが・・・
また、別の理由もあります
自分の知っている登山口の登山届入れは、ほとんど(感覚的に約5割)が野放し状態
見てはダメですが、だれでも見れるようになっています
登山届の回収も滞って(とどこおって)いる場合も多く、登山届があふれているようなところもあります
これも問題
男性ならまだいいですが、女性は特に入れたくないですね
・・・というか男性だって嫌です
そんなことから、自分の場合、ほとんどオンラインの登山届を使ってます
一応、現地にも登山届のコピーを持って行きます
そして、「プライバシーが保たれそうだな」と思ったときだけ、現地のポストに入れるようにしています
登山届はプライバシーの塊(かたまり)なので、届けを躊躇(ちゅうちょ)する気持ちは、とても分かります
この登山届を入れるポストを新しい堅固なものにするだけで、提出の率が増えると思うのですが・・・どうでしょうか
登山届を出さない人ってどんな人か?
今、自分の周りで登山を始める人の割合は、若い人(20才から30才)と年齢が高い人(50から70才くらい)が多いです
登山をやっている人ではなくて、あくまで「これから始める人」です
それ以外の世代、ちょうど30才から50才の間というのは、仕事や子育てが忙しいのか、最初から登山を始める・・という人は他の世代からすれば少ないように思えます(自分の周りだけなのかもしれないですが・・)
若い人達は、パソコンやスマホを使って、「オンライン登山届」や、ヤマレコなどの「SNS」を使っている世代
この世代はやる気があれば、オンラインを含めて、色々な方法で提出が可能です
また、いまの社会の雰囲気が
「登山届をだそう!!」
という雰囲気のため、それで育った世代は、自然と抵抗なく「登山届」を出せると考えます
しかし若い人はいいですが、年齢が上の方に「オンライン登山届」を勧めるのもどうかと思います
そして長年登山届を出していない人が、急に出すようなことは、なかなかありません
よって、一番登山届を出してもらうようにチカラを入れるところは、この年齢が上の登山者に焦点を絞るといいかもしれません
パソコンを使えない人は、どうすると登山届を出すようになるのか
手間だけを考えると、オンラインでの登山届が一番簡単です
しかし、年齢が高い人は、オンラインでの登山届提出は、単純にハードルが高い
手っ取り早いのはFAXで計画書を警察に流すこと、が考えられます
FAXならば、電話と同じ手順ですので、パソコンを使うよりはハードルはかなり低いと思います
やり方は簡単
- 山域担当の警察署を電話で探す
- 警察に電話をして、FAXを流すことを伝える
- 登山計画書を書いてFAXを流す
- 警察に流れたかどうかの確認をする
という流れ
・・・しかし、これには、問題があって、「登山届様式」を手元に持っている場合のみ可能な方法
そして、その様式をどこで手に入れるかが大問題
まず考えられるのは、面倒でも、電話での問い合わせの時に、必要事項を聞く方法
これが一番シンプルだと思います
一度聞いておけば、その後はそれを元に登山届を作ればいいので、とっても楽(ラク)
ちょっと最初が面倒なだけです
それが面倒であれば、まず最寄りの警察に直接行くことです
最寄りの警察署で用意している登山届を使ってFAXします
警察署は、悪いことをしない限り、あまり行くことがないので、ちょっと行きたくないかもしれませんが、警察官と言っても同じ人なので、聞くだけでは怒られないので、行ってみると、意外な情報なども教えてもらえるかもしれません
登山届は増えているが、内容の不備が問題・・・でも・・
今回の記事の元ネタで、「信毎web」というニュースのサイトで、下記のようなニュースがありました
(http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20170908/KT170825FTI090007000.php)
内容をざっと説明すると、
「登山届を書いている人は増えているが、書いてないところがあって、万が一の時に役に立たず、救助できない」
という内容でした
その中で、下記2つの登山届を特に「話にならない」例として挙げています
- 名前しか記載がない登山届
- 登る山を書く欄に「奥穂高岳」とだけあり、ルートや日程がない登山届
確かに救助する側からすれば、この届だけでは、雲をつかむような話
名前しかないということは、遭難したら、家族からの捜索願いを待つしかなく、名前があっても、なくても変わりません
多分こういう方は、家族にも行き先を詳しく告げないと思われるので、
- 家族より捜索願いがでる
- 最寄りの警察に行方不明の照会が行く
- 登山届の名前と一致
- 捜索を開始する
という流れしかありません
そして、行先もないので、探すときには、必然的に広範囲になり、時間も余計にかかります
遭難して何日もたってからの捜索は、助けるための救助をするには遅すぎます
ここで、細かく下山報告もある登山届を出した場合は、下山の報告がなければ、すぐ捜索にかかれます
これが、1分1秒違うだけで、命を救う可能性はかなり違うと思います
下山後の報告も重要
登山届けのことを書きましたが、下山してからの報告(下山報告)も重要です
届けをもらったひとは、下山報告がないと、いつまでも待っているようになります
そのための下山報告は、ひとつの区切りとして大変重要なので、忘れないで報告しましょう
警察など、下山報告がいらないところもあります
そういうところは、一定期間登山届けを保管しておいて、遭難の一報がない場合に届けを破棄(はき)するシステムになっています
昔は、山岳会などに入っていれば、登山届を出すことは重要な「必須事項」
しかし、山岳会などはそれなりに人との付き合いが大前提なので、それを嫌っている人は、個人で登山をする場合が多かったようです
現在ほどしっかりとした登山届のシステムがなかった時代に、個人で登山をしていた人は、登山届は全く眼中にないシステム
そういう人に登山届を出してもらうようにするのは、かなり難しいです
そんな中、登山届の提出は、関係者の努力によって、増えているそうです
届けの内容不備はあまり良いとは言えません
しかし、始まったばかりの「登山届義務化」の最初としては、まだ目をつぶれる内容なのではないか思います
現場は大変ですが、増えているということは悪くない内容だと思いますが、どうでしょうか
これにも賛否両論はありそうです
まとめ
富士山が世界遺産になって、Googleの検索でもトップになってきたことを考えると、今後、どんどん登山客が山に入ってくることになることは、簡単に想像できます
自分の周りでも、年齢を重ねてから、登山を始める方が多く、以前のような冒険的、先鋭的な登山のイメージから、気楽に楽しく登山を親しむような登り方をするような方が多くなってきました
そのようなことから、登山に含まれている危険や、社会的な責任の考えが希薄になってしまい、また、登山人口の増加も拍車をかけ、登山に対する意識が鈍ってしまっていることが現状ではあるようです
そのようなことから、登山届を強制するような条例は、確かに有効だと思います
登山は自由の象徴で、あまりがんじがらめにしてしまうと、登山本来の自由性が失われてしまって、登山の文化的なところが台無しになってしまうような気がします
それでも、この事故の多さなどの状況からすると、今の義務化への流れは致し方ないのかもしれません
日本山岳の中心的な県の動向から、全国的に広がる可能性があるこの「登山届 義務化」はこれからも注視していきたいですね
登山届をインターネットで書くには「コンパス」が便利
遭難対策で一番有効なのは、登山届です
特に最近はソロ(ひとり)で登山をするひとが多くなってきています
このオンライン登山届はそんな「ひとり登山」をするひとに特におすすめなので、参考にしてください